仙台地方裁判所 昭和45年(わ)479号 判決 1972年3月29日
本店所在地
仙台市一番町四丁目一〇番一九号
合資会社毎日遊技場
右代表者無限責任社員
陳芹菜
国籍
中華民国台湾台南市湾程一七四二番地
住居
仙台市一番町四丁目一〇番九号
会社役員
陳風霖
昭和三年六月四日生
右被告人等に対する法人税法違反被告事件について、当裁判所は検察官荒木紀男出席のうえ審理をとげ、次のとおり判決する。
主文
被告人合資会社毎日遊技場(以下被告人会社と称する)を罰金二五〇万〇、〇〇〇円に、被告人陳風霖を懲役六月に各処する。
但し、被告人陳風霖に対し、この裁判確定の日から二年間右刑の執行を猶予する。
理由
(罪となるべき事実)
被告人会社は肩書地に本店を設け、パチンコ店経営を業とする合資会社であり、被告人陳風霖は被告人会社の無限責任社員陳芹菜のいわゆる「いとこ」にあたるものであり、同会社の有限責任社員として、その営業および経理の一切を任されていたものであるが、被告人会社の業務に関し、売上の一部を公表帳簿に計上しないで除外するなどの不正な方法を用いて、被告人会社の所得の一部を秘匿して法人税を免れ、これによって得た資金を自己の購入した不動産の支払のためや薄外預金あるいは交際費にあてるなどの目的をもって
第一、昭和四一年一〇月一日から同四二年九月三〇日までの事業年度において、被告人会社の実際の所得金額が二、八二三万九、八五三円で、これに対する法人税額が九二九万一、〇〇〇円であったにもかかわらず、同年一一月三〇日、所轄仙台北税務署長に対し、右事業年度の所得金額は一、五二七万五、六五五円で、これに対する法人税額が四七六万二、五〇〇円(右所得金額に対する正当税額は四七六万四、四〇〇円)である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって、被告人会社の右事業年度の正規の法人税額と右申告税額 (但し、右正当税額)との差額四五二万六、六〇〇円を逋脱し
第二、同年一〇月一日から同四三年九月三〇日までの事業年度において、被告人会社の実際の所得金額が一、八二四万六、五〇三円で、これに対する法人税額が五七八万五、八〇〇円であったにもかかわらず、同年一一月三〇日、所轄仙台北税務署長に対し、右事業年度の所得金額は七三五万〇、一九三円で、これに対する法人税額が二〇〇万一、四〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって、被告人会社の右事業年度の正規の法人税額と右申告税額との差額三七八万四、四〇〇円を逋脱し
第三、同年一〇月一日から同四四年九月三〇日までの事業年度において、被告人会社の実際の所得金額が一、九七五万五、六一二円で、これに対する法人税額が六三〇万八、三〇〇円であったにもかかわらず、同年一一月三〇日、所轄仙台北税務署長に対し、右事業年度の所得金額は七六四万七、一七二円で、これに対する法人税額が二〇九万九、四〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって、被告人会社の右事業年度の正規の法人税額と右申告税額との差額四二〇万八、九〇〇円を逋脱し
たものである。
(証拠の標目)
判示全部の事実につき
一、被告人会社代表者陳芹菜の当公判廷(第一回および第七回)における各供述
一、被告人陳風霖の当公判廷(第一回および第七回)における各供述
一、別紙検察官請求証拠目録(二)記載の証拠全部
一、別紙検察官請求証拠目録(一)のうち請求番号六、一〇ないし九二および一〇四ないし一〇八記載の各証拠
一、押収してある法人税申告書控一袋(昭和四六年押第一四号の五)
判示第一の事実につき
一、別紙検察官請求証拠目録(一)のうち九三、九八および一〇一の各証拠
一、押収してある総勘定元帳一綴(昭和四六年押第一四号の一)
一、押収してある現金出納帳一綴(同号の二)
一、押収してある当座預金勘定一綴(同号の三)
一、押収してある売上伝票一二袋(同号の四)
一、押収してある法人税確定申告書一綴(同号の六)
一、押収してある伝票綴一二綴(同号の一九)
判示第二の事実について
一、別紙検察官請求証拠目録(一)のうち九二、九六、九九および一〇二記載の証拠
一、押収してある総勘定元帳一綴(昭和四六年押第一四号の七)
一、押収してある現金出納帳一綴(同号の八)
一、押収してある当座預金勘定一綴(同号の九)
一、押収してある売上伝票一二袋(同号の一〇)
一、押収してある法人税確定申告書一綴(同号の一二)
一、押収してある伝票綴一二綴(同号の二〇)
判示第三の事実につき
一、別紙検察官請求証拠目録(一)のうち九五、九七、一〇〇、一〇三、一六四および一六五の各証拠
一、押収してある総勘定元帳一綴(昭和四六年押第一四号の一三)
一、押収してある現金出納帳一綴(同号の一四)
一、押収してある当座預金勘定一綴(同号の一五)
一、押収してある売上伝票一一袋(同号の一六)
一、押収してある法人税確定申告書一綴(同号の一八)
一、押収してある売上帳一冊(同号の二一)
一、押収してある売上帳一枚(同号の二二)
(法令の適用)
被告人陳風霖の判示各所為はいずれも法人税法一五九条一項、七四条一項に該当するので、所定刑中いずれも懲役刑を選択し、以上は刑法四五条前段の併合罪であるから、同法四七条本文、一〇条により犯情の最も重いと認める判示第一の刑に法定の加重をした刑期の範囲内で被告人陳風霖を懲役六月に処することとし、なお、本件犯行は同被告人の背任的色彩の強いものであるところ、脱税が発覚してからは経理面に手を加え、重加算税もみずからの責任において納めるなどの事実が認められるので、その犯行態様をも考慮して同法二五条一項を適用してこの裁判の確定の日から二年間右刑の執行を猶予することとする。
被告人会社については、その有限責任社員で経理面を担当していた被告人陳風霖が同会社の業務に関し、判示各事実の違反行為をしたものであるから、いずれも、法人税法一六四条一項、一五九条一項、七四条一項に該当し、以上は刑法四五条前段の併合罪なので、同法四八条二項により各罪につき定めた罰金額の多額を合算した金額の範囲内で被告人会社に対し、罰金二五〇万円に処することとする。
よって、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 中川文彦 裁判官 坂井宰 裁判官平良木登規男は転任のため、署名押印することができない。裁判長裁判官 中川文彦)